家庭教育コラム No.6

No.6 「ありがとう」の言葉の力

今からちょうど27年前、三人目出産と同時に定年を迎えた義父母との二世帯同居が決まった。大分出身の義父母と山口出身の私とでは、実際に暮らすとお互いに様々な葛藤があった。思ったことを何でも口にして、腹の中に何も持たない義父母と、プライベートではグッと言葉を飲み込んでしまう私は、実に対照的で、私は三年間に三度も胃十二指腸潰瘍をつくった。一方で、義父母は、嫁から思ったことを素直に表現してもらえず、さぞやはがゆい思いをしていたに違いなかった。
そんな時だった。
私が担当させていただいている「リウマチ患者会」にて、グループワークをしている時に、普段口数が少ない年長の患者さんが、私にこうおっしゃった。
「あなたの『すみません』がとても気になるわ。言われたこちらが逆に申し訳ない気持ちになってくる。その言葉は、『ありがとう』に置き換えた方が、相手は気持ちいいと思うよ。」
ハッとした。これまで全国出張の多い私は、同居してから義父母に留守を頼むことが多く、いつも「すみません」を連発していた。その度に、「遠慮しないで。大丈夫だから、任せて。」と返答されていた。そこで、「ありがとうございます。助かります。」の言葉に置き換えるようにした。すると、「うんうん。ありがとうって、本当に気持ちいいね。」という言葉が返ってくるようになった。
改めて、「ありがとう」は、「双方の存在を承認し、労い合うことのできる力」をもっている一番の言葉だと思う。ありがとうは、相手が赤ちゃんや子どもであろうと、大人であろうと世界中の人々の関係性をプラスにつなぐ魔法の言葉だと信じている。

馬渡 徳子

医療ソーシャルワーカー