家庭教育コラム No.14

No.14 あのね、けいこ先生! vol.6「負けん気がない、NOと言えない、子ども自身も辛そうです」

お悩み相談の内容

Aさん:うちの子どもは負けん気がないし、向上心も持っていないみたいだけど、大丈夫かな…。
Bさん:人に「NO」と言うことを悪いと考えている子どもで、自分より他人の意向を尊重します。それによってしんどくなっているのをなかなか修正してあげられない。

けいこ先生より

お子さんのよいところも悪いところも、丁寧に把握しておられる様子が伝わって参ります。お子さんのよいところが十分にわかるからこそ、お子さんを大切に思うからこそ「もっとこうなって欲しい!」という思いが生じることもあるように思います。

さて、今回は「ひっくり返して考えてみる」ということをお伝えできればと思います。多くのものごとは、多面的、多層的な構造を持つものです。例えば「負けん気がない」という性質は、ひっくり返しますと「優しい」「穏やか」「おおらか」「できることを確実に積み上げる」「現状を正しく受けとめたうえで、自分にとっての幸せを大切にすることができる」と捉えることができそうです。お子さんは、本当の意味での「幸せな人生」を送ることができそうな予感がします!

同様に、「自分より他人の意向を尊重する」という性質は、「他者の気持ちを誠実に理解することができる」「自分を抑制することができる」「いざこざを調整することができる」「人のために働くことができる」「集団での成果を上げ、また維持することができる」可能性を秘めているように思います。集団において、なくてはならない存在です。

そう考えてみますと、「負けん気がない」ことも、「自分より他人の意向を尊重する」ことも、あながちよくない性質ともいえないようにも思えるのです。ただ、そのことでお子さん自身が苦しんだり、つらい思いをしたりする場合もあるかもしれません。その場合は、「負けん気がない」ことや「自分より他人の意向を尊重する」ことを決して否定的にとらえることなく、そうした性質ごと、まるごと全体でお子さんを受けとめていただければと思います。お子さんが、いつでも、いつまでも、「しんどい」「助けて」と言えるかけがえのない場所として、かけがえのない存在として、保護者の皆さまは、どうぞその場にいてください。全てのお子さまと保護者の皆さまが、毎日を幸せに過ごせますように、心から願っています。

けいこ先生

金沢大学人間社会研究域学校教育系 教授 滝口 圭子(たきぐち けいこ)氏
発達心理学を専門とし、子どもの発達を踏まえた保育、教育を研究。
自身も現在、小学生と中学生の3児の母として子育て奮闘中。