家庭教育コラム No.20
No.20 あのね、けいこ先生! vol.12「子どもが思ったように育たない…」
お悩み相談の内容
子どもが思ったように育ちません。「こんな風に育って欲しいな」という理想の姿を想い描きながら子育てがんばってるのに…。
けいこ先生より
ホントですねぇ。程度の差はあれ、同じ思いを抱いている保護者はとても多いと思います。さらに「こんな風に育って欲しい」の「こんな」の内容を突き詰めていくと、保護者の手前勝手な思い込みが横たわっていたりして、その醜さに自己嫌悪に陥るという悪循環。子どもの幸せを願う気持ちに、偽りはないのだけれど…。
さて、「思ったように育たない」という悩みにかき消されて、普段は見えにくいと思うのですが、実は、「思ったとおりに育った」と思える一面もあるのではないでしょうか。時には、お子さんが生まれた時に、家族で願ったことを思い出しながら、「思ったとおりに育った」ことを、数えてみてもよいのかもしれません。
合衆国の心理学者であるアリソン・ゴプニックは、『思いどおりになんて育たない:反ペアレンティングの科学』(森北出版,2019年)の中で「進化の見地からは、自分の子どもを思いどおりに育てようとすることは不毛であり自分を傷つけることにしかならない」「子どもを自分のイメージどおり、あるいは現在の理想の姿に育てることは、将来の変化への適応を阻害する可能性がある」と述べます。そして、「私たちの仕事は、何をしでかすかわからないさまざまなタイプの子が元気に生きられるよう、愛と安全と安定がそなわる保護された空間を与えることだ」とも。そうすると、親が思ったとおりに育っていないお子さんは、「将来に向けてのたくましい適応力を持っている」ともいえそうです(ちょっと屁理屈っぽいですが…)。
「今日、私にできることは、おいしい晩ご飯を作って(時々失敗するけど)、(できるだけ)機嫌よく過ごすことかな」と、いつもの答えに辿り着いたところで、全てのお子さまと保護者の皆さまが、毎日を幸せに過ごせますように、心から願っています。
金沢大学人間社会研究域学校教育系 教授 滝口 圭子(たきぐち けいこ)氏
発達心理学を専門とし、子どもの発達を踏まえた保育、教育を研究。
自身も現在、小学生と中学生の3児の母として子育て奮闘中。