家庭教育コラム 号外 い~わ~だより(R8.秋) 「子どもの『良心』や『道徳心』はどう育つ?」
人間は集団で社会を作って生きていく動物ですから、そこには必ずルールが発生します。信号を守らなくて平気、お店で欲しいモノを勝手に取っていって平気、税金を払わなくて平気…。このような大人ばかりでは社会が成立しません。そこで、人間の子育てでは、子どもがやがて社会の一員として周囲の人とともに生きていける大人になることを願って、しつけや教育を行います。
この“しつけ”というものは、「~したらダメよ」と厳しく叱ることではありません。
社会のルールを理解し、周囲の人と折り合いをつけながら行動できる子どもに育つためには、生まれた直後から積み重ねられる「人との関わり」が、とても大切なのです。
大切な“しつけの前段階”
人間の赤ちゃんはお腹から出てきてすぐから人の顔や目に強い関心を示します。赤ちゃんにじっと見つめられると、こちらも思わず見つめ返してしまいますよね。少し大きくなってくると、初めて出会ったことに対して「どうしたらいいのかな?」とでもいうように、大好きな人の方をふり返り、表情を確かめようとします。そのとき、大人が穏やかな表情をしていれば、「大丈夫なんだ」と感じます。一方、大人が心配そうな表情や険しい表情をしていれば、「これはやめた方がいいのかな」と判断します。
子どもは、「ちゃんと見守ってくれている」という安心感や信頼感を土台にして、大切な人の表情や態度から、「大丈夫なこと」「気をつけた方がよいこと」を少しずつ学んでいくのです。
このように、判断に迷う場面で身近な大人の表情や反応を手がかりにして、自分の行動を決めることを「ソーシャル・レファレンシング(社会的参照)」といいます。
こうしたやりとりを積み重ねることで、大きな声で「それをやっちゃダメ!」と注意されなくても、周囲の人の表情や態度、その場の状況から、「これはしても大丈夫」「これはやめた方がいい」と考えられるようになっていきます。そして、人との関わりの中でさまざまな経験を重ねながら、少しずつ自分の中に「良心」や「道徳心」の基礎が育っていくのです。
つまり、社会のルールを守る力は、ある日突然「しつけ」によって身につくものではありません。幼い頃から、「見てもらう」「見つめ返してもらう」「気持ちを受け止めてもらう」といった、人との温かなやりとりを積み重ねることが、その大切な土台になるのです。
いくつになっても大人が手本
人間の子どもは生まれた直後から他人をよく見ています。見て、真似て、学んでいます。口酸っぱく「ちゃんとルールを守りなさい」と言わなくても、大人が日頃からルールを守る姿を見せていれば、子どもはその態度をお手本にしていきます。特に「大好きな人」の真似をします。これは老若男女問わず、ですね。
ちょっと大きくなった小学生、はたまた中学生になると物事を見る目も現実的になってきますから、口先だけで注意して行動が伴わない大人を見て「あれ?この人、言ってることとやってることが違うぞ」と見破ることもできるようになってきますのでご注意を。
子どもに「こうなってほしい」と願うなら、まずは大人自身がその姿を見せること。それもまた、大切な「しつけ」のひとつといえますね。
家庭で子どもを育むための8つのすすめから
今回は、金沢市教育委員会の家庭教育に関する指針『家庭で子どもを育むための8つのすすめ』の「2 きちんと守ろう社会のルール 大人が手本」に関連するコラムでした。お時間のあるときに、『8つのすすめ』もご覧ください!
金城大学短期大学部 幼児教育学科 教授